CE認証(欧州連合向け)とFCC認証(アメリカ向け)は、製品を市場に出す際に必要な重要な規格です。日本国内でも取得可能であり、認証取得のプロセスを正確に理解し、対応する試験や書類の準備が必要です。
以下に、CE認証とFCC認証の取得手順を整理します。
目次
1. CE認証の取得手順(欧州連合向け)
CE認証とは?
- CEマークは、製品がEUの安全性、健康、環境保護の基準に適合していることを示します。
- 対象:電子機器、機械、玩具、医療機器など、幅広い製品。
CE認証取得の手順
- 適用される指令と規格の確認
- 製品が該当するEU指令を特定します(例:EMC指令、RoHS指令、低電圧指令)。
- 該当指令内の技術基準(EN規格)を確認します。
- リスクアセスメントと試験
- 製品が基準に適合しているか確認するため、第三者機関(試験所)での試験が必要です。
- 主に以下の試験を実施:
- EMC試験(電磁両立性試験)
- LVD試験(低電圧指令が該当する場合)
- RoHS試験(化学物質規制が該当する場合)
- 技術文書(Technical File)の作成
- 製品設計、試験結果、リスクアセスメントを含む技術文書を作成。
- 必須項目:
- 製品仕様書
- 試験レポート
- 回路図、レイアウト
- 使用材料や部品リスト
- 適合宣言書(DoC: Declaration of Conformity)の作成
- 製品がEU指令に適合していることを宣言する書類。
- 必要事項:
- 製品名、モデル番号
- 適用指令と規格
- 制造者情報
- CEマークの貼付
- 全ての基準を満たした後、CEマークを製品に貼付できます。
日本でCE認証を取得する場合
- 試験機関の利用:
- 日本国内には、CE認証取得に対応した試験機関があります(例:SGSジャパン、TÜV、Intertek)。
- 手続き支援サービス:
- CE認証のプロセスを代行してくれるコンサルティング会社を利用することも可能です。
2. FCC認証の取得手順(アメリカ向け)
FCC認証とは?
- アメリカで電子機器を販売するために、**FCC(Federal Communications Commission)**による電磁波規制の基準を満たす必要があります。
- 主な対象:無線機器、通信デバイス、電磁波を発するすべての電子機器。
FCC認証取得の手順
- 認証タイプの確認
- FCC認証には、以下の3つのタイプがあります:
- Certification(認証): 高出力の無線機器やWi-Fiデバイスなど。
- Declaration of Conformity(DoC): PCや周辺機器。
- Verification(検証): 低リスクデバイス(EMC試験のみ)。
- FCC認証には、以下の3つのタイプがあります:
- 規格の確認
- 対象製品に適用されるFCCの規格(FCC Part 15など)を確認します。
- 試験の実施
- 製品が規格に適合していることを確認するため、FCC認定試験所(TCB: Telecommunication Certification Body)での試験が必要。
- 試験項目:
- EMC試験(電磁両立性)
- RF試験(無線通信が含まれる場合)
- 試験結果の提出
- 認証に必要な技術文書(試験結果レポートなど)をFCCまたはTCBに提出します。
- 認証の取得
- 認証機関からFCC ID番号を取得し、製品に表示します。
- FCCマークの貼付
- 製品がFCC認証に適合している場合、FCCマークを製品に貼付します。
日本でFCC認証を取得する場合
- 試験機関の利用:
- 日本国内にあるFCC認定試験所(例:UL Japan、テュフラインランドジャパン)を利用して試験を実施。
- 手続き代行サービス:
- FCC認証に精通したコンサルティング会社を利用して、手続きをスムーズに進めることが可能です。
3. CE認証とFCC認証の違い
項目 | CE認証 | FCC認証 |
---|---|---|
対象地域 | 欧州連合(EU) | アメリカ |
試験の義務 | 一部の指令で義務化 | 試験はすべて義務 |
適合基準 | EN規格(国際標準) | FCC規格(米国内規格) |
マークの表示 | CEマークを貼付 | FCCマーク、FCC IDを表示 |
4. 日本での取得の具体的手順まとめ
共通する手順
- 適用規格の確認
- 製品に適用される規格を特定。
- 試験機関の選定
- 日本国内の認証対応試験機関(TÜV、Intertek、SGS、ULなど)で試験を実施。
- 技術文書の作成
- 試験結果をもとに、技術文書(テクニカルファイル)を作成。
- 認証取得
- 試験合格後、認証を取得し、必要なマークを製品に貼付。
取得のコツ
- 認証プロセスが複雑な場合は、認証取得代行業者の利用を検討。
- 試験費用は数十万円~数百万円かかる場合があるため、事前に見積もりを取る。
- 必要な書類や試験項目は製品によって異なるため、早い段階で試験機関と相談することが重要です。
結論: CE認証とFCC認証は日本国内でも取得可能で、専門機関を活用することで手続きを効率的に進めることができます。取得には規格の確認、試験の実施、技術文書の作成が必須であり、各ステップを計画的に進めましょう。
試験結果をもとに、技術文書(テクニカルファイル)を作成とは?誰が作成?
技術文書(テクニカルファイル)は、基本的には依頼者側(製品の設計・製造者)**が作成する必要があります。ただし、認証機関や試験機関がサポートや一部作成を代行してくれる場合もあります。以下に詳細を説明します。
1. 技術文書(テクニカルファイル)とは
- 技術文書は、製品が適用される規格や基準に適合していることを証明するための重要な書類です。
- CE認証では特に重要で、以下の内容を含むことが求められます:
- 製品の技術的仕様
- 試験結果
- 設計や製造に関する詳細
- リスク評価
2. 誰が技術文書を作成するのか
依頼者(製造者)側が作成する内容
技術文書の多くは、製造者や設計者が作成する責任を負います。これには以下が含まれます:
- 設計図面:
- 回路図、配線図、レイアウト図など。
- 部品リスト:
- 使用する部品や素材のリスト(BOM: Bill of Materials)。
- 製造プロセスの詳細:
- 製造工程のフローや品質管理の方法。
- 試験結果:
- 試験所から提供される試験報告書を含める。
- リスクアセスメント:
- 製品に関連するリスクと、それをどのように軽減したかの記録。
- 使用説明書とラベル情報:
- ユーザーに提供される取扱説明書や警告表示の内容。
認証機関や試験機関の役割
試験機関や認証機関は、以下の形で技術文書の作成をサポートします:
- 試験結果の提供:
- 試験機関が、適合性を示す詳細な試験レポートを提供。
- リスクアセスメントの支援:
- 必要に応じて、リスク評価のテンプレートやアドバイスを提供。
- 技術文書のレビュー:
- 作成された文書が規格に適合しているか確認。
3. 技術文書を認証機関に依頼する場合
認証や試験を専門とする機関では、以下のサポートを提供する場合があります:
- 完全代行サービス:
- 認証機関が製造者から情報を収集し、技術文書を全て作成する。
- 費用が高くなる場合がありますが、専門的な知識に基づいた文書が作成されます。
- 部分的な支援:
- 製造者が提供する設計情報や試験結果をもとに、認証機関が技術文書の一部を作成。
- 例:リスク評価や適合宣言書の作成支援。
4. 実際の進め方
製造者が主導で進める場合
- 試験結果を受け取る:
- 試験機関から提供される詳細な試験結果を取得。
- 設計資料を統合:
- 自社で保持している設計図面や部品リストを技術文書に追加。
- リスク評価を記載:
- 必要に応じてリスクアセスメントを作成。
- 適合宣言書(DoC)を作成:
- 最終的な適合宣言書を用意し、CEマークを貼付。
認証機関やコンサルティング会社に依頼する場合
- 情報提供:
- 製造者側で設計資料や試験結果を用意し、認証機関に提出。
- 文書作成支援:
- 認証機関がテンプレートや必要項目を提示し、補完的に作成を支援。
- レビューと修正:
- 作成された文書を認証機関がレビューし、不足があれば修正を依頼。
5. 費用や注意点
- 費用:
- 認証機関に技術文書の作成を依頼すると、数十万円~数百万円の追加費用が発生することがあります。
- 注意点:
- 技術文書は自社で責任を持って保管する必要があります(CE認証の場合、少なくとも10年間)。
- 文書が適切に作成されていないと、監査や販売停止のリスクがあるため、正確に記載することが重要です。
6. 結論
- 基本的に技術文書は製造者側が作成しますが、認証機関や試験機関からのサポートを受けることができます。
- 日本国内の試験機関やコンサルティングサービスを利用することで、プロセスを効率化できます。
- おすすめの進め方:
- 試験機関からの試験結果を基に、自社で設計情報を統合して技術文書を作成。
- 必要に応じて、認証機関に部分的なサポートを依頼して文書の完成度を高める。
不明点や追加支援が必要な場合、認証機関や試験機関に相談するのがおすすめです。
認証でどのくらいの期間が掛かる?
CE認証とFCC認証の取得にかかる期間は、製品の複雑さ、準備状況、試験内容、試験機関の対応速度などによって異なります。以下は一般的な目安です。
1. CE認証にかかる期間
プロセス別の期間
- 適用指令と規格の確認(1~2週間)
- 製品に適用されるEU指令やEN規格を特定します。
- 規格が複数にまたがる場合、確認に追加の時間がかかることもあります。
- 試験の準備(2~4週間)
- 製品の設計資料やサンプルを準備し、試験機関と試験内容を調整します。
- 試験機関の予約状況によって開始時期が変動します。
- 試験の実施(4~6週間)
- EMC試験、LVD試験、RoHS試験などを実施します。
- 製品が基準を満たさない場合、設計修正が必要になり、追加の試験が発生します。
- 技術文書(テクニカルファイル)の作成(1~3週間)
- 試験結果や製品設計資料を基に技術文書を作成します。
- 自社で作成する場合、スムーズに進めば1~2週間程度。
- 適合宣言書(DoC)の作成とCEマークの貼付(1週間)
- 適合宣言書を作成し、製品にCEマークを貼付します。
合計期間
- 6~12週間(約1.5~3か月)
- 試験機関の予約や製品修正が必要な場合はさらに長引くことがあります。
2. FCC認証にかかる期間
プロセス別の期間
- 適用規格の確認(1~2週間)
- FCC Part 15など、製品に適用される規格を特定します。
- 試験の準備(1~2週間)
- 製品のサンプルや設計資料を試験機関に提出し、試験内容を確認します。
- 試験の実施(2~4週間)
- EMC試験やRF試験などを実施します。
- 試験結果が基準を満たさない場合、設計修正や再試験が必要になります。
- 試験結果の提出とFCC ID取得(2~3週間)
- 試験結果をFCCまたはTCB(Telecommunication Certification Body)に提出し、認証プロセスを完了します。
合計期間
- 6~10週間(約1.5~2.5か月)
- 特に無線機能を含む製品の場合、試験や認証プロセスに時間がかかる傾向があります。
3. 日本国内でCE/FCC認証を取得する場合の注意点
- 試験機関の混雑状況:
- 日本国内の試験機関(TÜV、Intertek、UL Japanなど)は繁忙期(特に年度末や新製品の大量投入期)に混雑することがあり、予約に1か月以上かかる場合もあります。
- 製品修正のリードタイム:
- 試験中に基準を満たさないことが判明した場合、設計の修正と再試験で追加の1~2か月が必要になることがあります。
4. 期間を短縮するためのポイント
- 事前準備を徹底する:
- 適用指令や規格を正確に把握し、試験に必要な資料やサンプルを準備します。
- 経験豊富な試験機関を選ぶ:
- CE/FCC認証に特化した機関を選ぶことで、プロセスが効率化されます。
- 早めに試験機関を予約する:
- 製品設計が完了次第、すぐに試験機関に予約を入れることで待ち時間を短縮できます。
- 設計時に基準を考慮する:
- 初期設計段階からCEやFCCの基準を満たすように設計することで、再試験を回避できます。
5. 結論
- CE認証: 約6~12週間(1.5~3か月)
- FCC認証: 約6~10週間(1.5~2.5か月)
日本国内でもCE認証とFCC認証を取得することは可能で、認証機関や試験機関とのスムーズな連携が成功の鍵です。試験前の準備を万全にし、計画的に進めることで、全体の期間を短縮できます。