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制御系の仕事を初めてやろうとするエンジニアが読むと役に立つ内容が書いてありました。
私自身は、組込みシステムのエンジニアとして、マイコンのファームウェアを開発する仕事をしています。最近、機械系(電子)の制御分野の担当をすることになりました。
そこで手に取った本の一つがこちら
「すっきりなっとく 電気と制御の理論」
まず、コンデンサ、抵抗、コイルなどの基本的な特性について、
図を使いながら分かりやすく書いてあるのが役に立ちました。
そのあとは、モーター制御をはじめ、機械制御の理論について書いてあります。自動制御で定番のフィードバック制御、伝達関数やラプラス変換、などの説明も書いてあります。
本書の著者の望月さんはメーカーで自動制御系を取り扱う仕事をされてきた方です。
著者の経歴のポイントは、大学の教授ではなく、企業で実務をされてきた方というところ。
本書のよいところは、業務で実用的に必要となる箇所を想定して内容が書かれている点です。
教科書的な数式も出来ますが、業務でよく使いそうなポイントに絞ってあります。
何が言いたいかというと、大学の授業で、難しい数式ばかりを並べて、
「結局、この数式は実務のどこで役に立つの?」
っていう肝心なポイント分からないことてよくあるじゃないですか。
本書は、さすがメーカー出身の方が書いた本。実務で役に立つよっていうポイントを押さえた箇所が具体的に書いてあります。
著者の望月傳さんは、山梨大学卒業後、池貝鉄工株式会社、株式会社清康社、株式会社太陽システムなどに勤められた、民間企業での経歴のある方。
だから、現役のエンジニア向けの本だと思います。
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目次
「すっきりなっとく 電気と制御の理論」でメモった箇所
以下は、私が実務で活用するために、理解が足りないなと感じてメモった箇所。
コイルの交流特性
まずは74ページから77ページあたり。
コイル、コンデンサの特性交流特性についての記述です。
コイルを入れた回路の交流特性として、
電圧の位相は電流の位相より90°進んでいることが分かりやすく書いてあります。
特に、電圧と電流のベクトル図。複素数表示の図で、どういう矢印になるのかってのが直感的にすぐ思い出せるのが本書のいいところ。
コンデンサの交流特性
コンデンサについては、コイルの逆。
電流は電圧より90°進んでいる。
電圧が90°遅れるっていうふうにも言えます。
電圧と電流のベクトル図は、コイルと逆になっているというのがポイント。
それから R,L,Cの並列負荷の電圧と電流の関係もわかりやすく書いてあります。
コンデンサに流れる電流と、コイルに流れる電流の方向は反対なので、相殺関係にあるんですね。
コンデンサに流れる電流は電圧に対して90°進む。
逆に、コイルに流れる電流は電圧より90°遅れる。
もし、コイルに流れる電流の方が多ければ、位相が遅れた方向の矢印になるといくことが、
本書のベクトル図を見ることで思い出せます。
79ページの図は、コイルの電流の方が多くて位相が遅れるというのを表しています。
この関係について理解できるだけでも、本書の読む価値ありです。
オペアンプの入力インピーダンスが無限大だと、何がいいの?
次にオペアンプの使い方。
入力インピーダンスが無限大。逆に入力インピーダンスがゼロ。
両方の使い方について書いてありました。
入力インピーダンス無限大の場合の使い方として、133ページに分かりやすく書いてありました。
半導体センサなどのように一般に内部抵抗が大きく微弱な出力の信号源から高精度に信号電圧を取り出すためには電流を取り出さないことが肝要です。
このようなことを目的にした電圧フォロワによる電圧の精密測定の現実です。
と書いてあります。
入力インピーダンスを無限大にして、電流を取り出さない(取り出したくない)時に使える使い方です。
一方で、入力インピーダンス0の時にはどのように使うか?
これが134ページに書いてありました。引用します
入力インピーダンス0で出力電圧 V0が入力電流 I と比例してるこの増幅器はフォトダイオードのような電流出力のセンサの出力電流を電圧信号に変換する電流電圧変換器として用いることができます。
入力インピーダンスがゼロなので、電流をそのまま無駄にせず電圧に変換するのに活用できるということですね。
ラプラス変換の表記式とラプラス変換表
204ページ。自動制御ではおなじみ。ラプラス変換の表記式とラプラス変換表が書いてあります。
特にわかりやすいのは、ラプラス変換の表記法として微分は S。 積分は 1/S 。
ラプラス変換の表記表とは別に、ラプラス変換表も書いてあります。
ラプラス変換について思い出す時に、このページを開けば一発で思い出せます。
正弦波信号や階段状信号を入力して、自動制御系の応答を調べる
216ページから217ページ。
大事なポイントを引用します。
自動制御系では応答特性の観測や比較に便利なように入力信号として正弦波信号または階段上信号が用いられます
そして217ページの引用。
電気工学の交流理論で、電圧 Em を最大値とする Emejωtは正弦波交流を表します
インディシャル応答法と周波数応答法という言葉についての説明も分かりやすいです.
217ページ。引用します
階段状信号についての説明の注釈です。
自動制御系の応答性を知るために、基準として用いる入力信号として
階段上信号を用いる「インディシャル応答法」と
正弦波信号を用いる「周波数応答法」とあります。
階段状信号を使うか正弦波信号を使うかの違いですね。
インディシャル応答法は、入力信号や負荷などの過渡的な変化に対応する応答性と安定性を知るための方法。
周波数応答法は、入力信号や負荷の連続的な変化に対する応答性や安定性を知るための測定法。
増大する交流信号と減衰する交流信号の条件
さらに218ページ219ページには、増大する交流信号と減衰する交流信号の関係が書いてあります。
変数の正負によって、どういう波形になるのかというのが分かりやすく一覧表になっています。この表を見れば、式が表すイメージがつかめます。
まとめ
「すっきりなっとく電気と制御の理論」
単純な電子回路の基礎の本ではないです。
制御系に関わるエンジニアが使うであろう、必要であろう内容に特化した本です。
電子回路単体を説明する本ではないだけあって、アマゾンのレビューはひとつもありません。自動制御系に絞った本なので、読む人が少ないのかもしれません。
だからこそ、自動制御系の内容をしっかり勉強していけば、希少価値ある人間になれる可能性が高まるとも感じました。
例えば、私のような組み込みシステムのソフトウェアエンジニアは、本書に書いてある内容を理解してなくても業務自体はできると思います。でも、理論というか、数式のイメージだけでも知っておくだけで随分と他のソフトエンジニアとの差別化ができるのではないかと思っています。
制御系の理論の学習本の1つとして、本書はお勧めです。
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