モータ制御の文脈で、特に永久磁石同期モータ(PMSM)や同期リラクタンスモータ(SynRM)において、q軸インダクタンス()とd軸インダクタンス()という用語が使用されることがあります。これらのインダクタンスは、モータの磁場の異なる軸に関連するインダクタンスを指します。
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q軸インダクタタンスとd軸インダクタタンスの違い
- d軸インダクタンス():
- d軸は、永久磁石の磁場の方向を指します。言い換えれば、d軸はモータの磁石の極の中心を指す軸です。
- は、この軸上でのモータのインダクタンスを表します。
- q軸インダクタンス():
- q軸は、d軸に直交する軸であり、トルク生成に寄与する電流成分の方向を指します。
- は、この軸上でのモータのインダクタンスを表します。
これらのインダクタンスの違いは、永久磁石の影響に起因しています。磁石の存在はd軸のインダクタンスに影響を与えますが、q軸には影響を与えません。そのため、多くのPMSMモータでは、とは異なる値を持ちます。
これらのインダクタンスの違いは、モータのトルク生成能力やモータの動作特性に影響を与えます。Field-Oriented Control (FOC)のような高度なモータ制御アルゴリズムでは、これらのインダクタンスの値を正確に知ることで、モータの動作を最適化することができます。
FOC制御では、どちらの軸をどう制御するのですか?
FOC(Field-Oriented Control、またはベクトル制御)は、永久磁石同期モータ(PMSM)や誘導モータの高度な制御方法です。この制御方法の主な目的は、モータの磁場を直接制御することで、高い動作効率と応答性を実現することです。
FOC制御では、モータの電流をd軸(直軸)とq軸(横軸)という2つの直交する軸に分解して制御します。
- d軸制御:
- d軸はモータの永久磁石の磁場の方向を指します。
- FOC制御では、d軸の電流(��)を通常はゼロまたは非常に小さな値に制御することで、モータの磁場を最適化します。これにより、不要な磁場の変動や鉄損を減少させることができます。ただし、一部の応用例では、d軸電流を調整することで、磁場を弱める(フィールド・ウィーケニング)ことが求められることもあります。
- q軸制御:
- q軸はトルク生成に関連する軸で、d軸に直交します。
- FOC制御の主要な目的は、q軸の電流(��)を制御することで、必要なトルクを生成することです。ユーザーまたはシステムが要求するトルクに応じて、q軸電流が調整されます。
FOC制御の基本的な手順は以下の通りです:
- まず、モータの位相電流をサンプリングまたは計測します。
- パーク変換を使用して、3相の位相電流をd軸とq軸の電流に変換します。
- PID制御器(または他の適切な制御器)を使用して、d軸とq軸の目標電流と実際の電流の差を制御します。
- 逆パーク変換を使用して、d軸とq軸の制御電圧を3相の電圧に変換します。
- 最後に、この3相の電圧をPWM(Pulse Width Modulation)信号に変換して、モータドライバに供給します。
この制御方法により、モータは非常に滑らかに動作し、高い効率と高いトルク精度を達成することができます。