ノイズ対策部品として広く使われている「コモンモードチョークコイル」。
電子回路や通信機器、電源ラインなどで「信号は通すけれど、ノイズだけをブロックする」この部品の仕組みについて、初心者にもわかりやすく解説します。
スポンサーリンク
目次
コモンモードチョークコイルとは?
コモンモードチョークコイル(Common Mode Choke Coil)とは、2本の電線を一つの磁性体コアに巻き付けて構成されるノイズフィルタです。
特に、コモンモードノイズ(2本の線に同じ向きに流れるノイズ)を効果的に減衰させるために使われます。
信号とノイズの流れ方の違い
「信号は通すがノイズは減衰する」とはどういうことでしょうか?それを理解するには、差動信号(ディファレンシャル)とコモンモードノイズの違いを知る必要があります。
1. 通常の信号(差動モード)
- 2本の配線に逆向きに同じ大きさの電流が流れる
- 例:+I(正方向)、-I(負方向)
- この場合、磁界が打ち消し合い、コイルとしてのインピーダンスはほぼゼロ
- ⇒信号はそのままスムーズに通過
2. ノイズ(コモンモード)
- 2本の配線に同じ向きに電流(ノイズ)が流れる
- 例:+I、+I
- この場合、磁界が加算されて強くなり、コイルとしてのインピーダンスが大きくなる
- ⇒ノイズ成分は減衰・フィルタされる
図解:コモンモードとディファレンシャルモードの違い
以下の図のように、信号とノイズの流れ方によって、同じ部品が「通過」または「減衰」の役割を果たします。
コモンモードチョークの用途例
- ACアダプターやスイッチング電源のノイズ対策
- USBやLANなどの通信回路のEMC対策
- 車載機器のコモンモードノイズ抑制
まとめ
コモンモードチョークコイルは、「信号(逆向きの電流)」はそのまま通過させ、「ノイズ(同じ向きの電流)」だけを減衰させるという、非常に賢いフィルタ部品です。
ノイズ対策が求められる現代の電子機器設計において、欠かせないコンポーネントの1つといえるでしょう。