フィールドアプリケーションエンジニア(FAE)は、基本的には開発現場でのコーディングやデバッグを日常的に行うことは少ないですが、状況によって技術的なサポートのためにある程度の開発スキルが求められるケースもあります。
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目次
FAEのコーディング・デバッグの必要度
FAEの業務内容は主に「顧客対応」と「技術支援」に集中しているため、コーディングやデバッグの関わり方は以下のように分かれます。
1. コーディング・デバッグが必要なケース
以下の状況では、FAEもコーディングやデバッグを行うことがあります:
- 顧客のトラブルシューティング
- 顧客が自社製品を使用している際に問題が発生した場合、FAEがログ解析やデバッグツールを使って原因を特定し、開発チームへフィードバックする必要がある。
- ファームウェアやドライバの不具合が発生した際、最低限のデバッグ作業を実施することが求められる。
- 評価ボードやリファレンスデザインの提供・検証
- 新製品の評価ボードを顧客に提供する際、サンプルコードのカスタマイズや動作確認が必要になる。
- 組み込みシステムのセットアップや、ベンチテストのために短期間のコーディング作業を行う場合がある。
- 顧客向けデモ・プロトタイピング
- 新しい技術や製品のデモを行うために、簡単なプロトタイプを作成し、機能の実証を行う。
- 例えば、カメラモジュールの制御やモーター制御の基本的な動作を確認するためのコード作成。
2. コーディング・デバッグが不要なケース
以下のような場合は、コーディングやデバッグをほとんど行わず、主に技術サポートや提案活動が中心になります。
- 製品の仕様説明や技術コンサルティング
- 顧客の要件をヒアリングし、自社の製品ソリューションを提案。
- 実装そのものではなく、最適なアーキテクチャのアドバイスを行う。
- 営業サポート
- 営業と連携し、技術面からのフォローを行うが、開発現場での実装作業は行わない。
- 競合製品との比較やコストメリットの説明に注力。
- トラブル対応のエスカレーション
- 複雑な問題は自社の開発チームにエスカレーションし、自分でデバッグを深く行うことは少ない。
FAEに求められる技術スキルのレベル
FAEとして働くために求められる技術スキルのレベルは、以下のように実際の開発エンジニアほど深い知識は必要ないものの、顧客対応やトラブルシューティングができる程度のスキルが求められます。
- 必要な技術知識
- 組み込みOS(RTOS、Linux)の基本的な動作原理
- プログラミング言語(C、C++、Pythonなど)の基本的な理解
- 通信プロトコル(I2C、SPI、UART、CANなど)
- ハードウェアの基礎知識(回路図の読み方、データシートの解析)
- デバッグツール(JTAG、オシロスコープ、ロジックアナライザ)の使用経験
- 求められる範囲
- 「ゼロからソフトウェアを開発する」ほどの深いスキルは不要。
- 主に「提供されたサンプルコードのカスタマイズ」「トラブルの再現テスト」「簡単なデバッグ」ができるレベル。
- 顧客の開発チームとスムーズに会話できる技術力が重要。
3. 組み込みソフトエンジニアとの違い
組み込みソフトエンジニアとFAEの**「開発関与度」**の違いをまとめると、以下のようになります。
項目 | 組み込みソフトエンジニア | フィールドアプリケーションエンジニア |
---|---|---|
開発関与度 | 80〜100%(フルタイム開発) | 10〜30%(サポート目的) |
コーディング頻度 | 毎日 | 必要な場合のみ |
主な役割 | 実装・テスト・製品開発 | 技術サポート・提案・コンサルティング |
典型的なツール使用 | IDE、コンパイラ、デバッガ | ロジックアナライザ、評価ボード |
開発期間の関与 | 製品リリースまで | 問題解決・評価の短期関与 |
4. どちらを選ぶべきか?
- FAE向きの人
- 顧客とコミュニケーションをとるのが得意。
- コーディングよりも「技術+営業の橋渡し」に興味がある。
- フレキシブルな働き方(出張・リモートワーク)を希望。
- 収入アップを狙いたい(外資系FAEは高収入の可能性)。
- 組み込みエンジニア向きの人
- 技術を深く追求したい。
- コードを書くことが好きで、製品の完成度を高めることにやりがいを感じる。
- 安定した開発環境を好む。
結論
FAEは、「コーディング・デバッグの頻度は少ない」が、必要な場合にサンプルコードの調整や問題再現テストなどで技術的な対応が求められる職種です。
そのため、「開発現場にどっぷり浸かる」のではなく、「顧客支援のために技術を活用する」というスタンスでの関わりがメインになります。
もしあなたが「技術を使いながらも、よりビジネス寄りの役割に挑戦したい」と考えているなら、FAEへのキャリアチェンジは十分に魅力的な選択肢といえます。