ROS(Robot Operating System)はロボット制御用のオープンソースフレームワークで、ROS 1とROS 2にはいくつかの重要な違いがあります。以下に主な相違点を説明します。
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目次
1. アーキテクチャの違い
- ROS 1:
- シングルプロセスアーキテクチャ
中央で動作する「マスター」ノード(roscore)が、全てのノード間通信を管理します。 - 分散処理が難しい
マスターが単一障害点(Single Point of Failure)となるため、分散システムや耐障害性が必要なアプリケーションには向いていません。
- シングルプロセスアーキテクチャ
- ROS 2:
- 分散アーキテクチャ
DDS(Data Distribution Service)を採用しており、ノード間通信にマスターが不要です。 - 高い柔軟性
分散処理や耐障害性の向上により、マスターの存在なしでノード間通信が行えます。
- 分散アーキテクチャ
2. リアルタイム対応
- ROS 1:
- リアルタイム処理が難しい設計です。リアルタイム制御が必要な場合、ユーザーが自分で追加の工夫をする必要があります。
- ROS 2:
- リアルタイム対応を重視して設計されています。DDSを採用することで、通信のQoS(Quality of Service)設定が可能となり、リアルタイム制御が容易になりました。
3. 通信ミドルウェア
- ROS 1:
- 独自の通信プロトコル(TCPROS/UDPROS)を使用しています。これにより、拡張性が限られる場合があります。
- ROS 2:
- DDSを採用しており、業界標準の通信ミドルウェアを使用します。これにより、より柔軟で堅牢な通信が可能です。
4. プラットフォーム対応
- ROS 1:
- 主にLinuxに対応(Ubuntuが推奨)。
- 他のプラットフォーム(WindowsやMacOS)はサポートが限られていました。
- ROS 2:
- マルチプラットフォーム対応(Linux、Windows、MacOS、さらにはリアルタイムOS)。
- 組み込みシステムやクロスプラットフォーム開発が容易です。
5. セキュリティ
- ROS 1:
- セキュリティ機能がほとんどなく、外部からの攻撃に対して脆弱です。
- ROS 2:
- DDSのセキュリティ機能を活用し、暗号化や認証をサポートしています。
6. QoS(Quality of Service)
- ROS 1:
- QoS(通信品質)に関する機能がなく、通信の信頼性を保証する仕組みが不足しています。
- ROS 2:
- QoS設定が可能で、信頼性、優先度、データ更新頻度などを制御できます。
7. モジュール性と拡張性
- ROS 1:
- 古いライブラリやツールを使用している場合があり、メンテナンスや拡張に限界があることがありました。
- ROS 2:
- モダンなツールやライブラリを採用しており、今後の拡張性が高いです。
8. 互換性
- ROS 1:
- 長年利用されてきたため、多数のパッケージやライブラリが存在しています。
- ROS 2:
- 新しい設計のため、ROS 1のパッケージとの互換性が一部欠けています。ただし、ROS 1 Bridgeを使用することでROS 1とROS 2の間で通信可能です。
どちらを選ぶべきか?
- ROS 1がおすすめの場合:
- 過去のプロジェクトや既存のエコシステムを活用したい場合。
- 初学者向けに学習目的で利用する場合。
- ROS 2がおすすめの場合:
- 新規プロジェクトを始める場合。
- リアルタイム性能、セキュリティ、分散システムが必要な場合。
- 長期的なプロジェクトや最新技術を活用したい場合。
まとめ
ROS 2はROS 1の欠点を解消し、現代のロボットアプリケーションに対応するよう設計されています。
特にリアルタイム処理や分散システムを必要とする場合は、ROS 2を選択するのが適しています。一方で、ROS 1のエコシステムを活用する場合は、引き続きROS 1を使用する選択肢もあります。