BLDCモータのセンサレス制御において、BEMF(逆起電力)を使用すると、エンコーダーやホールセンサーなしに回転位置を推定することができます。しかし、既にモータが回転している状態での再起動は複雑な課題が伴います。
この記事では、回転中のモータを再起動する際の具体的なアプローチ方法を詳しく解説します。
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目次
1. アライメント手順の実施
回転中のモータの位置推定は一筋縄ではいきません。そのため、最も基本的なアプローチはモータの一時停止です。
・停止しての位置確認
モータを短時間停止させることで、BEMFのゼロクロッシングを確認し、モータの現在位置を特定します。この情報は、再起動の際の初期推定に利用されます。
・短時間のアライメント
停止後、特定のフェーズに電流を流してモータのロータを特定の位置にアライメントします。これにより、次の起動時にモータの状態を確実に知ることができるのです。
2. BEMFの推定と補正
モータが回転していると、その回転速度や負荷によりBEMFの形状や振幅が変動します。この変動を正確に把握することが再起動の鍵となります。
・BEMFのリアルタイムモニタリング
モータの動作中、BEMFの波形をリアルタイムでモニタリングし、その変動を迅速に検知します。
EMFのリアルタイムモニタリングの具体的な方法について詳しく説明します。
浮動フェーズの選定
モータの3つのフェーズのうち、常に1つのフェーズは浮動状態(非通電状態)になります。この浮動フェーズからBEMFを読み取るのが一般的です。
差動アンプの利用
BEMFの信号は低電圧であり、そのままでは処理が困難です。高精度の差動アンプを使用してBEMF信号を増幅します。これにより、マイクロコントローラやデジタル信号プロセッサでの処理が容易になります。
アナログ-デジタル変換
増幅されたBEMF信号は、マイクロコントローラのADC(アナログ-デジタルコンバータ)によりデジタル信号に変換されます。これにより、デジタル処理が可能になります。
デジタルフィルタリング
デジタル信号は、ノイズや他の不要な信号成分を取り除くためにデジタルフィルタを通過します。これにより、BEMFの解析がより正確に行えます。
ゼロクロッシング検出
BEMF波形のゼロクロッシング(零点通過)は、モータの回転位置を推定する際のキーとなるポイントです。デジタル信号を解析することで、ゼロクロッシングのタイミングを正確に検出します。
時間解析
ゼロクロッシングのタイミングやBEMFの周期から、モータの現在の回転速度や位相を解析します。これに基づいて、次の通電タイミングやPWM制御を行います。
フィードバックループの組み込み
検出されたBEMF情報をもとに、制御アルゴリズムが動的に更新されます。これにより、モータの実際の動作状態に応じて最適な制御を行うことができます。
・アルゴリズムの動的補正
検知されたBEMFの変動をもとに、制御アルゴリズムを動的に補正します。例えば、ゼロクロッシングの検出タイミングが変わった場合、その新しいタイミングを基にモータの制御を更新します。
3. 起動時のトルク制限
再起動時には、モータに急激なトルクが発生しないよう注意が必要です。
・トルク制御のアルゴリズム
制御ソフトウェアには、トルクを一時的に制限するアルゴリズムを組み込みます。これにより、再起動時の過大なトルク発生を防ぐことができます。
・安全な起動の確認
トルク制限を行うことで、モータや駆動回路へのダメージリスクが軽減されるとともに、モータの挙動も安定します。安全な起動を確認するためのテストも欠かせません。
まとめ
BLDCモータのセンサレス制御における再起動は、多くの技術的課題を伴いますが、適切なアプローチ方法とアルゴリズムの調整により、効率的かつ安全な再起動を実現することが可能です。上述の手法を組み合わせて使用することで、実際のアプリケーションにおいても高い性能を発揮することができるでしょう。