医療や産業用途で使われるガスの「質量流量(mass flow)」を、正確にかつ高速で測定するために用いられるのが「熱式マスフローメータ」です。
この記事では、その測定原理・センサ構成・用途例・メリットと注意点までを、初心者にもわかりやすく紹介します。
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目次
熱式マスフローメータの原理|熱の“移動量”がガスの流れを教えてくれる
🔧 測定の仕組み:
- ヒーターをガス流路の中央に配置
- 上流側と下流側に温度センサ(RTDなど)を配置
- ガスが流れると、加熱された空気が下流に運ばれて温度差(ΔT)が生じる
- このΔTから「単位時間あたりの質量流量(mg/sやsccm)」を演算
センサ構成・ブロック図の基本
🧱 構成要素:
- ヒーター:マイクロヒーターやフィルム加熱素子
- RTD1(上流側温度センサ)
- RTD2(下流側温度センサ)
- 流路一体型 or MEMS構造で形成
- 電流制御+ADC内蔵MCU(例:RX23E-Bなど)
- 補償用RTD(外気温補正)
主な用途・導入例
分野 | 使用例 |
---|---|
医療機器 | 人工呼吸器、酸素濃度制御、麻酔ガス管理 |
半導体製造 | プロセスガス供給、MFC(Mass Flow Controller) |
分析装置 | GC/MS用ガス管理、サンプリング装置 |
環境計測 | 空気質モニタリング、排気監視装置 |
メリット・デメリット
メリット | デメリット |
---|---|
高速応答・高精度 | ガスの種類によって熱伝導率が違う(校正必要) |
可動部がなく信頼性が高い | 液体測定には不向き(冷却強すぎ) |
小型センサに集積可能(MEMS) | ΔT計算がやや複雑でMCU依存大 |
よくある質問(FAQ)
Q. 体積流量(L/min)と何が違うの?
→ 質量流量は温度・圧力に左右されず「流れた重さ」がわかります。体積より正確な流量管理が可能です。
Q. 気体によって補正が必要?
→ はい。窒素と酸素では熱物性が異なるため、ガス種ごとにキャリブレーションが必要です。
まとめ|熱式マスフローメータは“質量の流れ”を測るためのプロ用センサ
微小なガス流量でも正確に検出できる
ΔT(上下流の温度差)をMCUで演算して質量流量に変換
医療・産業・分析分野で幅広く使用されている信頼性の高いセンシング技術です