ガルバニックアイソレーションとは、電気回路間で直接的な電気的接続を断ち切りながら、エネルギーや信号を伝達する技術または手法を指します。日本語では「電気的絶縁」や「ガルバニック絶縁」とも呼ばれます。
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目次
1. 主な目的
- 安全性の向上
高電圧回路や異なる電位の回路間で電流が直接流れるのを防ぎ、感電や機器の故障を防ぎます。 - ノイズの防止
回路間のグラウンドループや電磁ノイズの影響を減らし、信号の品質を保ちます。 - 絶縁要件の遵守
規格や法規(例:医療機器や産業用機器)で定められた安全基準を満たします。
2. 使用される技術
ガルバニックアイソレーションを実現するために、以下の技術が一般的に使用されます:
2.1 トランスフォーマ(変圧器)
- 仕組み
磁気結合を利用してエネルギーを伝達します。一次側と二次側の巻線間で電気的な接触がなく、完全に絶縁されています。 - 用途
電源変換(AC-DC、DC-DCコンバータ)や信号絶縁。
2.2 光アイソレーター(フォトカプラ)
- 仕組み
LEDが光信号を発し、フォトダイオードやフォトトランジスタがそれを受信して信号を伝達します。 - 用途
制御信号の絶縁(例:マイクロコントローラーと高電圧機器間の絶縁)。
2.3 容量結合(キャパシタンス)
- 仕組み
2つの回路間にコンデンサを配置し、AC信号を容量結合を通じて伝達します。DC成分は遮断されます。 - 用途
高速データ通信(例:高速RS-485、USBアイソレーション)。
2.4 磁気結合(IC技術)
- 仕組み
集積回路内でトランスや磁気結合素子を使用して信号を伝達します。 - 用途
高性能・小型化された絶縁IC(例:デジタルアイソレータ)。
3. 主な応用分野
3.1 医療機器
- 患者に接触する装置と高電圧回路間でガルバニックアイソレーションを使用し、感電や信号の干渉を防ぎます。
3.2 産業用機器
- PLC(プログラマブルロジックコントローラ)やモーター制御回路で、高電圧と低電圧の回路間を安全に接続。
3.3 電源設計
- スイッチング電源で一次側と二次側を絶縁し、安全かつ効率的に電力を供給。
3.4 通信とデータ転送
- RS-485やCANバスなどの通信プロトコルで、グラウンドループの問題を解消。
4. メリットとデメリット
メリット
- 高い安全性:感電や機器の損傷を防ぐ。
- ノイズ耐性の向上:信号伝送の品質を保つ。
- 多様な用途:さまざまなアプリケーションで使用可能。
デメリット
- 設計の複雑さ:絶縁設計が必要。
- コストの増加:絶縁コンポーネントの導入により価格が高くなる。
- 伝送速度の制約:特に光やトランスフォーマーを使用する場合、高速通信が難しい場合もある。
5. 実際の設計での注意点
- 絶縁耐圧の確保
必要な耐圧性能を確認し、適切な絶縁材料や部品を選ぶ。 - 規格準拠
使用する機器の規格(例:UL、IEC 60601など)に合致する絶縁性能を満たすこと。 - ノイズ管理
電磁干渉(EMI)を防ぐために、回路配置やシールドの工夫が必要。
ガルバニックアイソレーションは安全性や信号品質の確保に不可欠な技術であり、電気設計やシステム設計において広く使用されています。選択する絶縁方法や部品は、具体的な用途や性能要件に応じて慎重に選ぶことが重要です。