デッドタイム補正は、モータードライブやインバータ制御において非常に重要な概念です。これは特に、半導体スイッチングデバイスを用いる電気モーターの駆動において関連します。
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デッドタイム補正とは?
デッドタイムとは、一般的にモータードライブのブリッジ回路において、上側のスイッチがオフになった後と下側のスイッチがオンになる前の短い間隔を指します(逆のケースも然り)。この時間は、上側と下側のスイッチが同時にオンになることを防ぐために必要です。もし同時にオンになってしまうと、ショートサーキットが発生し、デバイスが破壊される可能性があります。
しかし、このデッドタイムが存在することで、以下の問題が発生する可能性があります:
- トルクリップルの増加: デッドタイムによって生じる電圧の変動が、モータのトルクリップルとして表れる可能性があります。
- 調波の増加: 電流波形にノイズや不均一性が生じることで、調波が増加する可能性があります。
- 電流の誤差: デッドタイムにより、電流の計測に誤差が生じる可能性があります。
デッドタイム補正は、これらの問題を軽減または解消するためのテクニックです。具体的には、制御アルゴリズム内でデッドタイムの影響を推定し、PWM信号を調整してデッドタイムの影響を打ち消すように動作します。
FOC(Field Oriented Control)制御において、デッドタイム補正はモータの性能や効率を最適化するために非常に重要です。特に、高速や高トルクの運転時において、デッドタイムの影響を最小限に抑えることが求められます。
デッドタイム補正の制御アルゴリズムは?
デッドタイム補正のアプローチは、具体的なハードウェアの設計や使用する半導体デバイスの種類、目的のアプリケーションに応じて異なる場合があります。ただし、一般的な基本的なアイディアを以下に示します。
- デッドタイムの影響の推定:
- デッドタイムによる電圧のエラーを推定します。デッドタイム中にスイッチがオフになると、逆ダイオードが導通し、電圧が生成されます。この電圧の変動は、デッドタイムの期間と電流の大きさに依存します。
- デッドタイムの長さと、その間のモータ電流の大きさを元に、このエラー電圧を計算することができます。
- PWM信号の調整:
- 推定されたデッドタイムエラーを元に、PWM信号を調整します。例えば、エラーが正の場合、PWMのオン時間を短くすることで補正を行います。逆に、エラーが負の場合、PWMのオン時間を長くして補正を行います。
- この補正は、PWMのデューティサイクルを微調整することで実現されます。
- フィードバックループの統合:
- 実際の電流や電圧のフィードバックを取得し、デッドタイム補正の精度を確認します。
- 誤差がある場合、補正量を調整することでフィードバックループ内で再度補正を行います。
このようなアプローチは、特に高速回転や高トルクでの運転時において、デッドタイムによるエラーの影響を大幅に減少させることができます。ただし、実際の実装には、使用するハードウェアの特性や制御アルゴリズムの詳細、さらにはシステム全体の動作条件など、さまざまな要因を考慮する必要があります。